
2025年4月に発表されたロレックスの新作「ランドドゥエラー」に初搭載された“キャリバー7135”は、ブランドにとって重要な転換点となるムーブメントだ。では、これまでのロレックス製キャリバーとは何が違うのか? 本稿ではその進化の本質に迫る。
~36,000振動の鼓動が切り拓く、新時代のメカニズム~
■ 36,000振動/時 ― 高振動化の意義とは?
これまでロレックスの代表的な自動巻きムーブメント(例:キャリバー3235)は28,800振動/時(毎秒8振動)で動作していた。これに対し、キャリバー7135は36,000振動/時(毎秒10振動)と、かつての「エル・プリメロ」級のハイビート仕様に移行した点が最大のトピックだ。
▶ 精度の向上
高振動になることで、外部衝撃や姿勢差による精度のブレを抑えることができる。結果として、日差±1~2秒という驚異的な安定性を実現している(※自社計測値)。
▶ スウィープ運針の美しさ
秒針の動きがより滑らかになり、視覚的にもプレミアム感が強化されている。
■ 新素材 × 新設計 ― 耐久性と整備性の両立
キャリバー7135では、以下の革新が施されている。
トライ・インバーテッド・エスケープメント:効率的な動力伝達を可能にする三重構造の脱進機を採用。摩耗を抑え、長寿命化を実現。
パラフレックス耐震装置の改良型:衝撃耐性が従来比で約1.6倍に強化。
シリコン製ヒゲゼンマイの進化版:磁気耐性の大幅向上により、スマートデバイスとの併用にも強い。
■ なぜ今、高振動ムーブメントなのか?
ロレックスは長らく「高振動=パーツへの負荷増加」という課題を理由に、28,800振動を堅持してきた。しかし、現代の新素材技術と高精度加工によって、その課題を完全にクリア。むしろ、プロフェッショナルユースや過酷な環境下における実用性を追求する上で、36,000振動は理想的な選択だったと言える。
■ 総評:キャリバー7135は、ロレックスの“未来の標準”
キャリバー7135は単なるスペックアップではない。これは「ロレックスが“使う人のため”にどこまで真摯に進化できるか」という姿勢の結晶である。ランドドゥエラーにこのムーブメントを最初に搭載したのも、ブランドが今後このモデルを“新たな象徴”と位置づけていることの証左にほかならない。
今後、キャリバー7135が他モデルにも展開されるかは不明だが、一つだけ確かなのは——ロレックスは今、再び“精度と信頼”の王道を歩み始めたということだ。